STOP!老後不安「40、50代からできること」 (前半)
長くなった老後
平成27年の厚生労働省「簡易生命表」によると、日本人の男性の平均寿命は80.79歳、女性の平均寿命は87.05歳です。1920年(大正9年)の平均寿命は男性61.1歳、女性は61.5歳でしたので、約100年間で、日本人は20年以上長生きできるようになったことになります。また今後も医療の進歩などで、寿命はさらに延びる余地があるといわれています。
寿命が延びたことで、ライフスタイルも大きく変わりました。
先ほど例に出した大正時代では、男性の定年は55歳とした場合、平均寿命が61.1歳ですから、現役を引退してから平均しておよそ6年後に亡くなっていました。平成の今はというと、男性は60歳で退職したとしても、その後、約20年人生が続きます。つまり、退職後の生活が長くなってきたということです。
老後に必要なお金は人それぞれ
長生きすることは良いことだけれど、途中でお金がなくなったらどうしよう・・・。
そういった不安は、皆さんお持ちだと思いますし、最近はネットや雑誌などでも「退職までに○○円が必要だ」といった特集をよく見かけますね。また、多くの金融機関が「だから、若いうちから備えを!」、「資産運用をしましょう!」などなどの提案を行っていますね。
しかし、退職までに用意しなければならないお金の額は、その後どういう暮らし方をしたいのか?によって、人それぞれ異なります。
たとえば生命保険文化センターの調査で「ゆとりある老後生活のために必要な生活費は夫婦で月額35万円」というデータがあります。この夫婦の場合ですと1年間で420万円、10年間で4,200万円、20年間で8,400万円の生活費がかかることになります。
しかし、家のローンを払い終えている、お金のかかる趣味を持っていない、子どもが独立している…といった理由で、月に35万円もかからないという方もいらっしゃるでしょう。逆に、自分はできるだけ楽しく過ごしたいから、月に50万円は必要だ、という方もいらっしゃるでしょう。この場合なら、1年間で600万円、10年間で6,000万円、20年間なら1億2,000万円の生活費がかかることになり、月35万円の場合に比べて3,600万円も異なります。またこのように毎月の金額を単純に10年20年と掛け算をするのも現実的ではないでしょう。
老後の生活費 こう考える
そのため、なによりも肝心なのは、おカネを貯める!運用する!ということではなく、自分の場合、将来どの程度の生活費が必要になるのか?を考えることです。まだまだ先の事だから、そんなのわからない・・・という方がほとんどかもしれません。まずは、今の生活費を確認し、そこから老後にかかりそうな生活費を推測してみると良いでしょう。
今の生活費を正確に把握するには、やはり家計簿が1番。最近では、パソコンやスマートフォンのアプリで簡単に家計簿をつけることができます。クレジットカードの決済は引き落とし先の銀行口座を登録、現金での決済はレシートを撮影するだけで、おおよその支出が確認できます。
今の支出を把握できれば、そこから退職後には必要がなくなりそうな出費を差し引きましょう。たとえば、ランチを外食ですませている方は、退職すると食費は減りますよね。スーツやシャツなどの服飾費用も減るのではないでしょうか。また、子どもが独立して生活をはじめれば、多額の死亡保険金をのこすような生命保険などは必要なくなるかもしれません。
このように、退職後の月々の生活費はこれくらいかかりそうだな・・・と、大まかに知ることが、最初の一歩です。また、一般的に退職後は現役時代よりもお金はかからないものだな・・・と思えたら、ちょっとは不安が少なくなりませんか?
医療や介護にかかるお金も忘れずに
生活費と違って、予想が難しい出費があります。病気になったり、介護が必要になったりしたときの費用です。もちろん、一生介護が必要にならず、大きな病気をしない可能性もありますが、どれくらいのお金がかかるのかを知っておくと安心です。
生命保険文化センターが2015年に行った調査によると、1人あたりの介護費用はトータルで550万円。介護期間は平均4年11ヵ月で、月額平均約8万円に加え、住宅の改修など一時的な費用に平均80万円となっています。医療と介護を合わせて1人あたり800万円くらいかかるのではないか、というのが私の持論です。もし、このあたりを、もっと詳しく知りたいという方は、さまざまな書籍や情報がインターネット上にありますが、先日発売になった拙著「定年男子 定年女子 45歳からはじめる 金持ち老後入門」もご参照いただけると幸いです。
ここまでは、おカネが出て行くことについてご説明しました。次回は、「もらえる」おカネについてご説明します。
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