アーリーリタイアとは?第二の人生を早めに始める生き方

2021年4月から企業の努力義務として、従業員の70歳までの就労確保を盛り込んだ「改正高年齢者雇用安定法」が施行されるなど、 現在の日本社会は就労年数を延ばす方向に進んでいます。しかし、できることなら定年を待たずに退職し、自由な時間を過ごしたいと考えている人も多いのではないでしょうか。そんな、定年を待たずに退職するのが「アーリーリタイア」です。最近では保有している資産を運用し、その収益で生活できる状態を作ってアーリーリタイアを行う「FIRE」などの概念も注目され始めました。
そこで、この記事ではアーリーリタイアの概要やメリット・デメリットのほか、実現するために必要な資金の考え方についてご紹介します。

アーリーリタイアは「早期退職」のこと

アーリーリタイアとは、日本語でいえば「早期退職」であり、定年前に仕事を辞めることです。現在、日本の企業・組織の定年は60~65歳が一般的ですから、これより早く50代までに退職すればアーリーリタイアといえるでしょう。なお、育児や介護を理由とする一時的な退職や休職のほか、転職する際に数ヵ月仕事から離れるなど、一時的に仕事をしない状態になることは、アーリーリタイアには含まれません。

完全に仕事を辞めるのではなく、仕事の量を減らしつつ空いた時間を自由に過ごすスタイルは「セミリタイア」と呼ばれ、アーリーリタイアとは区別されています。

アーリーリタイアの希望者は増加中

信仰する宗教や歴史的背景からか、西洋では労働を「苦役」と捉える人も多いようです。一方、日本では労働を「自分が成長するための糧」や「喜び」と考える人も多く、生涯現役が肯定的に捉えられるなど、長く働くことを良しとする傾向があります。
 
しかし、日本人の労働観も少しずつ変化しており、近年では30~50代を中心に、アーリーリタイアを望む人や、実現する人が少しずつ増えている現状があるのです。

アーリーリタイアのメリット

アーリーリタイアを望むのは、その多くが仕事だけに縛られず、もっと時間を自由に使いたいと考えている人。メリットとしては、次のようなものがあります。

自由に使える時間が増える

アーリーリタイアの最大のメリットは、なんといっても自由に使える時間が増えることです。仕事に費やしていた時間を自由に使えるため、仕事との両立は難しかった長期旅行や趣味の活動もできます。通勤がなくなることで、地方や海外へ移住することも可能です。

仕事関係のストレスがなくなる

仕事をしていれば、どんなに自分に合った職場であっても、人間関係の軋轢や仕事の重圧、自由になる時間が少ないなど、多かれ少なかれストレスはあるものです。アーリーリタイアをすれば、このような仕事のストレスから解放されるでしょう。

体力のあるうちに好きなことができる

65歳や70歳で定年を迎えた場合、若いときに比べて体力が落ちていたり、持病があったりと、思ったように動けないことが少なくありません。30~50代の体力があるうちにアーリーリタイアをすれば、定年を迎えてから退職するよりも、アクティブに好きなことに取り組めるでしょう。

アーリーリタイアのデメリット

ただし、アーリーリタイアにはメリットだけでなく、デメリットもあります。実行する前に、デメリットについてもしっかり把握しておくべきでしょう。

収入がなくなることにより金銭的不安

アーリーリタイア最大のデメリットは、収入が一切なくなるため、金銭的な不安が発生しやすいことです。また、勤め人だった場合は厚生年金を支払う期間が短くなるので、その分、受け取れる年金額も小さくなります。あらかじめ十分な資金を準備し、しっかりとリタイア後の生活設計をしておくことが重要です。

時間を持て余す

アーリーリタイアはあくまでも手段です。 そのため、アーリーリタイアを行った後にやりたいことが明確でない場合、急に増えた時間を持て余すことになるかもしれません。人によっては、毎日やることがなくなり、生きがいをなくしてしまうことも考えられます。

仕事の人間関係が希薄になり、孤独を感じやすくなる

会社の同僚や取引先など、仕事関連の人間関係がなくなることで孤独を感じたり、アーリーリタイア後に精神的に不安定になったりする人もいるようです。

デメリット解消のカギは「金銭的な不安」と「精神的な不安」に対し、対策をしておくこと。十分な資金を用意するのはもちろん、自由になった時間をどうやって過ごすのか、仕事の人間関係に代わる人とのつながりをどう形成し、保っていくのか、アーリーリタイアに踏み切る前に必ず考えておきましょう。

アーリーリタイアに必要な資金とは?

アーリーリタイアを成功させるためには、金銭の不安なく生活していけるだけの十分な資金が欠かせません。そうなると気になるのは、「どれぐらいの資金があれば十分なのか」ということでしょう。
アーリーリタイアに必要な資金は、年間生活費の25倍 といわれることもあり、貯金だけではなかなか貯めるのが難しい金額です。
リタイア後にどのような生活を送りたいかは人それぞれですから、必要となる資金額も当然違ってきます。自分の生活に必要な金額を知るには、普段の生活費と理想の生活を送るために必要なお金をそれぞれ計算し、総額を出してみるのがおすすめです。
以下の5つのポイントをチェックした金額が、アーリーリタイアに必要な資金額といえるでしょう。

1. 普段の生活費はいくらかかっているか

2022年11月に総務省が発表した「家計調査報告」の結果(2022年7〜9月の平均) によると、2人以上世帯の消費支出額は、1世帯あたり1ヵ月平均28万5,429円です。単身世帯での消費支出額は、1世帯あたり1ヵ月平均15万2,856円となっています。
ただし、普段の生活にかかる費用は、世帯の人数や子供の有無、生活状況によってかなり違いがあります。外食の有無や家賃の金額によっても大きな差が出ますので、まずは自分の普段の生活費を把握してください。

2. アーリーリタイアしてしたいことに、いくらかかるか

必要な資金は、アーリーリタイア後にやりたいことによっても変わってきます。例えば、海外に転居して生活するのか、田舎に引っ越すのか、現在の住居に住みながら地域で活動するのかで違うでしょう。
アーリーリタイア後にやりたいことを具体的にイメージし、おおよその資金計画を立ててみることが重要です。

3. 年金受給まで何年あるか

年金を受給する年齢までの年数によっても、用意すべき金額は変わるでしょう。同時に、年金の受給が始まった後、月々の収支がどうなるのかもチェックしておくべきポイントです。
例えば、厚生労働省が発表した「令和4年度の年金額改定について 」によると、夫婦の片方が月収43万9,000円で40年間就業し、片方が専業主婦(夫)だった場合、夫婦2人が受け取る標準的な年金額は月額21万9,593円。月々の生活費支出がこれを上回る見込みの場合は、年金受給開始以降も、貯蓄から差額分を補填する必要があります。

4. 社会保険料や税金はどれだけかかるか

公的医療保険料や所得税、住民税などの税金は、前年の収入をもとに計算されるものなので、今年収入がなかったとしても、昨年収入があれば課税されます。また、厚生年金保険に加入していた人は国民健康保険へ切り替えとなり、納める義務が生じます。
公的医療保険料や税金は意外に多くかかる場合もあるので、これらの費用もしっかり把握しておくことが大切です。

5. 考えられる突然の出費に備えられる蓄えがあるか

自分や家族が、病気やケガをしないとも限りませんし、冠婚葬祭があれば出費があるでしょう。予想できる出費ばかりではなく、
このような突然の出費に対応するだけのお金も、確保しておく必要があります。

6. 投資収益などで生活費をまかなえるか

近年、経済的に自立し、早期リタイアを目指す「FIRE」という新しい概念も注目されています。FIREとは「Financial Independence(経済的自立)」と「Retire Early(早期退職)」の頭文字を組み合わせた言葉。リタイア後の生活費を補える資産(投資元本)を確保した上で、資産運用による収益で経済的な自立を目指します。

FIRE発祥の地であるアメリカでは、FIRE開始時の資産額の目安を「年間生活費の25倍」と設定。その資産を投資元本として資産運用を行えば、年利4%の投資収益によって生活費が補えるという計算です。
例えば、前述した通り、2人以上世帯の消費支出額は1ヵ月28万5,429円でしたので、年間だと約336万円の生活費がかかる計算。これの25倍なので、アーリーリタイア時には8,400万円の資産が必要ということです。
仮に8,400万円の資産を年利4%で運用できたとすると、投資収益は年間336万円です(税金や諸費用などは考慮しないものとする)。つまり、8,400万円の資産は確保しておきながら、投資収益で生活費をまかなうことができます。

なお、8,400万円という数字は2人以上の世帯の平均支出に基づいた数字です。そのため、夫婦二人で貯めるとなると、1人4,200万円。アーリーリタイアも少し、現実味を帯びてくるのではないでしょうか。FIREの概念を例に紹介しましたが、投資収益でアーリーリタイア後の生活費を補えるかどうかも、頭に入れておきましょう。

アーリーリタイアに必要な資産づくりは、資金運用がカギ

アーリーリタイアに必要な資金は、理想とする生活によります。自身がアーリーリタイアしてどのような生活を送りたいか、それにはどれだけの資金が必要なのか、しっかり検討してから決断することをおすすめします。

貯金だけでアーリーリタイアの資金を作ることはなかなか難しいですから、投資信託の購入や不動産投資といった資産運用も視野に入れて、資金準備に役立ててください。


監修者プロフィール
吉田 祐基
ライター・編集者。AFP/2級FP技能士。マネー系コンテンツの制作が得意。これまで東洋経済オンライン(東洋経済新報社)、日本経済新聞(日本経済新聞社)、Finasee(想研)などで企画・編集・執筆を担当。

 

執筆者プロフィール

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