【極上のテレワークVol.3】アドベンチャーワールドで野外テレワークを

2020年の新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言発出以降、多くの企業で導入・実施されたテレワーク。確かに、オフィスより自宅は気楽。だけど、もっと居心地が良くて、もっと創造性を刺激し、もっと仕事がはかどるようなテレワーク環境があるはず…。
そんな、至高のテレワーク環境を探し求め、全国各地のテレワークスポットを文筆家・ワクサカソウヘイさんが体験レポートしていきます。第3回は、和歌山・南紀白浜のアドベンチャーワールドでの野外テレワークです。

働きながらだって風を感じたい

風を感じることの少ない人生を送ってきました。
私ことワクサカソウヘイは、文筆業に従事する身です。つまり、毎日毎日、狭い作業部屋でキーを叩き続けている身です。肩をすぼめて、生きています。

その閉塞感から逃げるようにして各所でテレワークを行ったりもするわけですが、やはりそこは原則的に室内で、四方を壁に囲まれての作業となります。ああ、私の生活は、あまりにも風に吹かれていません。
ケージの中での営みを運命づけられたハムスターだって、時にはアフリカの広大な大地に想いを馳せます。青空の広がるサバンナの景色の中で、爽やかな風に吹かれてテレワークをしてみたい。それが一介の自由業である私の長年の願いでした。

いえ、そんな夢など叶うはずがありません。テレワークにおいて、電源とWi-Fiは必須。サバンナにそんなもの、設置されているはずがないのです。だいたい、アフリカは遠すぎます。テレワークをするために、わざわざ国際線に乗るなんて、費用対効果のバランスが悪いと言わざるをえません。

「ああ、日本国内に電源とWi-Fiが確保されているサバンナがあればいいのに…」

風の吹かない作業部屋でそんなことをぼやいていたら、奇跡が起きました。和歌山県・白浜町にあるテーマパーク「アドベンチャーワールド」には、なんとアフリカゾウなどを見ながら作業のできる、自然体感型のテレワークスポットが存在するという情報が飛び込んできたのです。動物園、水族館、そして遊園地までもが一体となった魅惑のエリアに、まさかそんなものがあるなんて。

アフリカゾウが目の前にいるシチュエーションなんて、どう考えてもサバンナです。しかもアウトドア。風を感じられる可能性は大です。何よりも和歌山は国内。私の夢を叶える条件はすべてそろっています。

しかし、よくよく考えたら、あやしげな情報でもあります。テーマパークとは本来、遊びに行くところであり、PCを持ち込んで仕事をするところではありません。本当にアドベンチャーワールドに、テレワークスポットなんてあるのでしょうか。

真偽のほどを確かめなくてはなりません。さっそく私はノートPCを片手に、ヌーの大移動のごとき猛然とした勢いで、紀伊半島を目指すことにしました。

ジャイアントパンダがのびのびと過ごす場所

アドベンチャーワールドは、南紀白浜空港からタクシーで約5分のところにありました。空路を使えば、東京から約70分で到着します。

初めてのアドベンチャーワールド、私はその玄関口の前に立ち、驚愕しました。なんと大きなゲートなのでしょう。ほかの動物園とは一線を画すスケール感が、すでに漂っているではありませんか。

おそるおそる、園内へと足を踏み入れます。

すると、入園してわずか5分で、ペンギン、レッサーパンダ、アジアゾウなどに出会えました。マップを見たら、まだアドベンチャーワールドのまつ毛にふれただけみたいな感じです。なんというアニマル密度なのでしょう。

お目当てのテレワークスポットは、園内の奥にある「サファリワールド」なるゾーンに設置されているとのこと。そこを目指して、ずんずん歩いていきます。

途中で何やら、来園者たちが群れている建物が目に入りました。それは、希少動物繁殖センターである「パンダラブ」という名の施設。そこでは、ジャイアントパンダの姿を見学することができます。

この日は、真っ青な空の広がる真夏日でした。私を含む来園者たちは、誰もが汗をかきシャツを湿らせている状況だったわけですが、パンダは、冷房がキンキンに効いた部屋でゆったりと竹を噛んでいました。

アドベンチャーワールドは、国内で最もジャイアントパンダの繁殖に成功している施設でもあります。
園内では、たくさんのパンダに出会うことができるのです。彼らの愛らしい姿に安らぎを得て、これから始まるテレワークにも気合が入ります。「出勤前のコーヒー」みたいな感じでパンダを堪能したのは初めてです。

和歌山にあるアフリカ

さて、希少動物繁殖センターからさらに歩を進めていくと、ようやく「サファリワールド」へとたどり着きました。
そこに広がる景色を見て、私はまたしても驚愕しました。
アフリカです、そこには見事なまでにアフリカのサバンナが広がっていたのです。

快晴の空の青色、隣接している空港の滑走路の丘の緑色、そして動物たちが暮らすグラウンドの赤茶色。原色的なカラーが雄大なパノラマの中で混ざり合い、そこに太陽のまぶしい日差しが降り注いでいます。そして、キリンやシマウマたちが体を揺らしながら闊歩しています。

これはどう見ても、サバンナです。和歌山には、疑似アフリカがあったのです。

異国に降り立ったような興奮を落ち着かせながら、目当ての施設はどこにあるのだろうかとあたりを探りました。
このような疑似アフリカの中に設置されているというテレワークスポット。それがどのような姿をしているのか。ミーアキャットのように、キョロキョロと目を向けます。

すると、サファリワールドの全景を見渡すことのできる高台に、何やら異彩を放つ、竹で編まれた建築物を発見しました。

見れば作業台があり、椅子があり、そして100V電源が設置されています。Wi-Fiのパスワードも表示されています。

そう、この建築物こそが、噂に聞いた「和歌山のサバンナに存在するテレワークスポット」だったのです。
正式名称は「パンダバンブーモバイルワーケーションスポット」、もしくは「竹象庵」
アドベンチャーワールドが滋賀県立大学陶器浩一研究室と共同で企画・設計・設立をした、自然体感型の竹製テレワークスポットです。

ジャイアントパンダの主食である竹。その竹のうち、パンダが食べない部分の価値を新たに見直すプロジェクトの一環として、ここに建てられたとのこと。「かつてないワーケーションスポット」を掲げているそうです。
確かに、ロケーションの面から考えても、これはなかなかお目にかかれない施設であると思われます。ワイルドというか、奇抜というか、実験的というか。とにかく、異色の建物であることは間違いありません。

風と潮風とサバンナの香りが吹き抜ける仕事場

さて、使用感を試してみましょう。さっそく台にノートPCを広げ、作業を開始しました。
カチャカチャとキーを叩き、原稿のマス目を埋めていきます。ふと指を休め、伸びをします。そしてPCの先の景色に目をやると、そこにはアフリカゾウたちがいるではありませんか。

PCディスプレイ越しに見るアフリカゾウ。実に非日常的な景色です。遠近感がおかしくなります。自分は今、どこで何をやっているのか。座標を見失ってしまうような、心地の良いトリップ感に包まれます。

この日はずっと、夏の太陽に照りつけられ、酷暑にさらされていた私です。しかし、パンダバンブーモバイルワーケーションスポットの中は、実に快適な空間でした。まず、屋根が作る日陰の存在が大きいわけですが、それに加えて、高台を通り抜ける風が竹のにおいをさらって、爽やかな涼しさを演出してくれているのです。そうです、私は「風を感じながら作業をしたい」という夢を叶えることができたのです。

建築物を設置する際には、まず地形を検討し、風が通る場所を選ぶことの重要性を強く実感しました。もしこの先、自分が庵を結ぶ機会が訪れたら、ぜひ風の有無に注目していきたいものです。

気づけば、かなり原稿ははかどっていました。パンダバンブーモバイルワーケーションスポットは、その野性味あふれる外観からは想像できないほどに、気持ち良く作業のできるスペースだったのです。過剰表現ではなく、リゾートに滞在しているような気分さえ味わうことができました。

少し休息をとろうと、あたりを散策しました。高台を下っていくと、そこにはアメリカバイソンがいました。私は哺乳類の中では、とりわけウシ科が好きな人間です。バイソンたちの姿を眺めながら一息入れます。世にも稀なる「息抜きバイソン」です。

すると、東京にいる仕事関係の知人から電話がありました。現在進めているプロジェクトについての確認の連絡でした。これぞまさにテレワーク。対応していると、電話の先で相手が言いました。

「国内では聞き慣れない動物たちの鳴き声が響いているのですが、いったいどこにいるのですか…?」

説明に困りました。

オンライン会議の話題にも事欠かないスポット

それにしてもこちらのアドベンチャーワールド、動物たちにそれぞれ与えられている飼育面積がとても広いです。縦横無尽に駆けている動物園のシマウマを、私は生まれて初めて見ました。
なんだかみんな、いきいきと暮らしている印象です。私もこの抜けるような景色の中で作業ができて、実に爽快な気分です。パンダバンブーワーケーションスポットに戻って、次のワークを進めます。

途中、リモートでの打ち合わせが1件、入っていたことを思い出しました。会議用のアプリを立ち上げます。Wi-Fiは実にスムーズに動いてくれます。
打ち合わせのお相手は、文筆家の藤岡みなみさん。企画記事についての相談です。

「そんな場所でテレワークできるなんて…!」

羨望の声を上げてくれた藤岡さんは、そういえばジャイアントパンダ好きとしても名を馳せている方でした。「さっき、良浜(ラウヒン:10頭もの子を生み育ててきたベテラン母パンダ)に会えましたよ」と自慢すると、そこから打ち合わせはそっちのけで、パンダトークに花が咲きました。

「ジャイアントパンダは700万年前の氷河期から生きているとされる珍獣で、見た目の愛らしさもさることながら、その生存の歴史も魅力的な動物なんですよね」
「パンダをずっと観察していると、一頭一頭の個性にピントが合うようになるんです。そうなったら、もうあなたもパンダの虜ですよ」
「パンダの腸って、肉食動物と同じ構造らしいんですよね。植物からうまく栄養を取り入れることができなくて、だから竹をずっと食べ続けているんですって」

動物の王国でリモート会議をすると、どうしても動物の話に脱線してしまうということが判明した、貴重な時間でした。

サバンナワークが想像以上に集中できる理由

気づけば、夕方の時刻が近づいてきました。そろそろテレワークも終了です。
振り返れば、かなりの作業をクリアすることができていました。

ふと思いました。そういえば今日一日、かなり余裕のある気分でPCに向かうことができたな、と。

いつもであれば迫り来る締切りや納期に追われて、どこか焦りやストレスにさらされながらの作業を行っている私なのですが、アドベンチャーワールドでは何だかアフリカゾウのごとき大らかな態度でテレワークに臨むことができていたのです。そうでなければ、打ち合わせの最中にパンダについての雑談を芯から楽しむことなどできていなかったでしょう。

風があること、広い景色の中に腰を据えること、そして自然の気配に囲まれること。それらの要素が、普段の狭い部屋では得られることのできない、悠々とした心地を作り出してくれていたのです。
今日の私は、冷房の効いた部屋で竹を食むジャイアントパンダに負けるとも劣らない、優雅な時間を味わうことができていたのでした。実に満足です。

ちなみにアドベンチャーワールドでは、イルカやクジラのパフォーマンスを観ることができる、大型のスタジアムも設置されています。
ここでは、電源こそありませんが、園内のWi-Fiは捕まえることができます。つまり、イルカのジャンプを眺めながらのテレワークも可能なのです。

アニマルたちが彩る非日常的な空間の中で作業をしたいすべての人々に、アドベンチャーワールドでのテレワークをおすすめします。

なんならこの原稿も、5割はアドベンチャーワールドで書きました。


<施設紹介文>
アドベンチャーワールド パンダバンブーモバイルワーケーションスポット

アドベンチャーワールドと滋賀県立大学陶器浩一研究室が共同で企画・設計・設営し、2021年7月19日に誕生した日本初の自然体感型竹製テレワークスポット。里山を荒廃させる竹を伐採し、ジャイアントパンダの食事として活用することで里山の環境を守り、同時にこれまで廃棄していたパンダが食べない部分の竹などを有効資源として活用するパンダバンブープロジェクトの一環として制作された。現在は入場者なら利用可能。

アドベンチャーワールド

撮影/髙橋 学(アニマート)

 

執筆者プロフィール

  • 本稿は、執筆者が本人の責任において制作し内容・感想等を記載したものであり、新生銀行が特定の金融商品の売買や記事の中で掲載されている物品、店舗等を勧誘・推奨するものではありません。
  • 本資料は情報提供を目的としたものであり、新生銀行の投資方針や相場説等を示唆するものではありません。
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  • 上記資料は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を新生銀行が保証するものではありません。

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