花火は冬のほうがきれいに見える!花火師がおすすめする楽しみ方

日本の夏の風物詩といえば、打ち上げ花火ですよね。しかし、コロナ禍で花火大会の中止が相次ぎ、今年になってようやく復活してきたとはいえ、まだまだ元通りとは言い難い状況です。しかし、そんな中でも花火と音楽を融合させたショーが開催されるなど、新しい花火の楽しみ方が生まれているそう。
今回は、江戸時代から150年の歴史を誇り、打ち上げ花火の製造やプロデュースを行う丸玉屋小勝煙火店の小勝康平さんに、花火の仕組みや進化した花火ショーなどについて教えていただきました。

打ち上げ現場で目の当たりにした花火の迫力と、団結して働く楽しさ

――小勝さんは家業が花火業者だったということですが、ご自身が花火師になろうと思ったきっかけはなんだったのですか?

小勝さん(以下敬称略):
小さい頃から花火師さんたちが楽しそうに仕事をしている姿を近くで見ていて、いいなとは思っていました。でも、実際に自分が花火師になろうと決心したのは、18歳のとき。
初めて打ち上げ現場に連れて行ってもらったときに見た花火の美しさはもちろん、真下から見る花火の音や迫力に圧倒されてしまって。それに、大人数で団結して現場を回して、無事に終わったことをみんなで喜ぶっていう一連の流れにも感動して、これを仕事にしたいと決めました。

――やはり、打ち上げ現場で真下から見る花火は迫力が違うものですか?

小勝:
そうですね。花火大会自体には子供のときから何回も行ってはいたんですが、やっぱり真下から見るとちょっと見え方が違いました。後ずさるくらいの迫力があって、圧倒されましたね。

――実際、花火師になっていかがですか?

小勝:
想像したとおりの楽しいこともありますが、年々心配事が増えてきているような気はします。やはり、事故なく終えられるかが一番重要。次に出来栄えとか、お客さんが喜んでくれたかが続きますね。とにかく、「安全でないと」とは思っています。

花火ってどうやって作るの?花火師がおすすめする楽しみ方

――そもそも花火は、どうやって作るものなのでしょうか?

小勝:
すごくたくさんの工程があるんですけど、まず火薬を配合するところから始めます。粉末状の炭とか硫黄とか、俗にいう酸化剤というものを混ぜて、それを機械で小さな粒にしていくんです。その粒のことを「星」というんですが、次にその星に火薬をかけてどんどん大きくしていきます。
そうやって星を育てていって、ある程度の大きさになったら、「星」と「割薬」という星を飛ばすための火薬を、「玉皮」という紙でできた丸い容器に詰めるんです。そうすると、皆さんがよく打ち上げ花火と聞いてイメージする丸い花火になります。

花火玉の見本

――「星を育てる」というのは、具体的にどういう作業なんですか?

小勝:
色ごとに星を作っていきます。最初は本当に砂粒みたいに小さいんですが、それを濡らして、粉末状の火薬をちょっとずつかけると、雪だるまみたいに少しずつ大きくなる。例えば、1日に0.03mmなど、ある程度の大きさになったら天日干しして、その日の作業は終わり。それを繰り返して粒を大きくしていくんです。星を育てることに一番時間がかかるし、根気が必要な作業ですね。

――今準備されている花火は、いつ打ち上げられるものなんですか?

小勝:
早いものだと年末カウントダウンのイベントに間に合うなっていうものもあれば、それと同時に来年の隅田川花火大会の準備をしておこうという感じで、青、緑、紅とか、色ごとに星を育てておく。星を作るのは、今日作り始めて明日すぐできるっていうものではないので。

――花火の色や形は、どの段階で決まるものなんですか?

小勝:
基本、星の色は火薬の配合の比率で決まります。例えば、青だったら酸化銅の火薬を何グラム入れるとか、その配合比は花火業者によって違っています。作った各色の星を組み合わせて、形を決めていくんです。

――その星の色は、全部で何色あるんですか?

小勝:
これが難しい質問で。うちの会社でも青は青だけど、いろんな配合があって。ちょっと濃い青とか、過去にやっていた青とか、今年バージョンの青とか、全部配合比が違っているんです。

――毎年、同じ色なのかと思っていました!

小勝:
同じ青でも「今年はちょっと色を濃くしたい」となると、去年より少し配合を変えますので、色は無数にあるんです。でも、細かい色の違いはあるものの、青、紅、黄色、紫、水色、オレンジなどの、色鉛筆であるような基本色は作ることはできますよ。

花火玉の中身の見本

――最近はハートやキャラクターなど、いろいろな形になる花火も多いですよね。そういう花火は、どうやって設計されるんですか?

小勝:
それは、「玉皮」の中で平面にハートの形に星を並べると、そのままの形で飛んでいくんです。並べた時点で15cmのものが、打ち上げると上空で200mくらいに広がる。意外と、形を作るのは簡単。その代わり、平面になっているので、こっち側から見た人はきれいにハートが見えるけど、あっち側から見た人にはただの線にしか見えないっていう問題はあって。
だから、いろいろな方向から見られることを考えて、ハートは1発じゃなくて、何発か上げるようにしています。

――形を作るのって難しい技術なのかと思っていました。

小勝:
本当に難しい技術っていうのは、花火の芯を増やすことです。芯は、花火の中に星の輪を何重に入れるかということ。見本の花火玉だと、一番外側が銀色の星の輪、その内側に青の星、紅の星で輪が入っていて、3重の花火に見える作りなんですよ。その芯を1個増やすだけで、難度が格段に上がるんです。今、日本の花火では、その芯が5重に入るのが最高峰ですね。

――最近の花火大会のトレンドってあるんですか?

小勝:
日本人は、花火といえば夏って思っている方がやっぱり多いと思うんですけど、最近は秋から冬にも花火大会が増えています。実は、冬のほうが花火ってきれいに見えるんですよ。
空気も乾燥していて澄んでいるので、同じ配合で同じ星を作ってみても、夏より冬のほうが色も鮮やかに見えます。寒いという問題はありますけど、冬の花火はおすすめですね!

コンセプトも技術も常に進化し続ける花火ショー

――11月には、B’zの楽曲に合わせて花火を打ち上げるショー「B’z ULTRA FIREWORKS 2022-2023」に参加されたそうですが、そういうコンセプトがあるショーは増えてきているんですか?

小勝:
増えてきていますね。点火方法が発達して、電気点火が増えたからだと思います。30年前は、人が火種を持って直接火をつけていたので、5発同時に上げるといっても、5ヵ所に並んで「せーの!」って声をかけて同時に上げるという感じだったのですが、今は0.01秒単位で制御できるんです。
事前にプログラムしておけば、50ヵ所でも同時に上げることができるようになったので、そういう音楽と合わせた花火ショーなどができるようになったんだと思います。

――そういうイベントだと、普通の花火大会とは見せ方が変わってくるものですか?

小勝:
そうですね。楽曲からイメージして花火のプログラムを組み立てるので、すごくセンスを問われます。花火の場合、練習やリハーサルができないので、上げてみないとわからない部分もあって。そのへんは今までの経験によるところも大きいです。花火師というと昔かたぎの職人というイメージがどうしてもあると思うんですけど、今はセンスと経験の両方が求められるようになってきているのかもしれません。

――最近手掛けられた花火の中で、これはチャレンジしたなと思うものは?

小勝:
「STAR ISLAND」というイベントでは、シンガポールやサウジアラビアで打ち上げ花火のイベントを行いました。沖縄で開催される「琉球海炎祭」では、20年以上前から音楽と花火の融合をやっていて…。でも、毎年同じ上げ方ではつまらないですから、主催者さんと話し合って、毎回新しいチャレンジをしています。

「STAR ISLAND」の様子

――「STAR ISLAND」と「琉球海炎祭」は、どんなイベントなんですか?

小勝:
「STAR ISLAND」は、花火の演出に加えて、ダンスやいろいろなパフォーマンス、照明、レーザーなど、日本のエンターテインメントの技術を融合してショーを作り上げています。
「琉球海炎祭」では、デザイナーのコシノジュンコさんがプロデュースした花火を上げるんですが、コシノさんから「花火を空中でシュッと横に曲げてほしい」とかってオーダーが入って…。それって、打ち上げ花火では無理じゃないですか(笑)。コシノさんもわかって言ってらっしゃるんだと思うんですけど、そう言われたら、こちらとしては「なんとか工夫して実現してやるぞ!」って思うんですよね。だから、毎回何が来るのかヒヤヒヤしながらも、楽しみにしています。

打ち上げ花火で日本を明るく!苦境が続く花火業界を応援しよう

――海外で日本の花火はどのように評価されているんですか?

小勝:
日本の花火は、すごくクオリティも高いし、安全性も高いから、やっぱり評価はめちゃくちゃ高いです。私自身も海外で挑戦してみたいという思いをずっと持っていたので、海外で行われた花火のコンクールで評価されたり、海外で大きな仕事をしたときは、すごく達成感がありました。

――海外の方はどんなリアクションなんですか?

小勝:
やはり、すごく喜んでもらえます。だから実際に、花火を売ってほしいっていうお話もたくさんあるんですけど、そこには輸送費の問題だったり、日本の製造会社の規模では供給が追いつかないという問題があったりして。どうしても単価が安く、大量に作れる中国に後れをとっている部分はあります。

――今後チャレンジしていきたいことはありますか?

小勝:
大変な状況下でもやっぱり花火が好きですから、もっと花火を発展させて、身近なものにしていけたらいいなと思っています。若い人で花火師を志す人も減っていて、人手不足が切実な問題となっていますし、花火業界を盛り上げるという意味でも、もっといいショーをしないといけないなって思っています。

――最後に、この記事を読んだ方に向けてメッセージをお願いします。

小勝:
コロナ禍で花火大会も減ってしまったので、皆さんに求めてもらわないと、花火っていう文化は続かないと思うんです。だから、今読んでいただいている人の中で、花火を見たいと思ってくださっている方がいたら、自治体など主催者さんへ来年も開催してほしい等の声を上げてもらえたりしたらうれしいですね。
そういう声があれば、僕らもまだまだがんばれると思いますし、僕個人としては、花火大会がたくさんあれば、日本が明るくなるくらいに思っていますので。

株式会社丸玉屋小勝煙火店

住所 東京都府中市押立町1-35-35
営業時間 8:30~18:00
定休日 日・祝日(9~4月は土曜日も定休)
URL http://www.mof.co.jp/

 

執筆者プロフィール

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