パズルマニアの挑戦!世界最大のクロスワードパズル「メガクロス」

「カギ」と呼ばれる文章をもとに、タテ・ヨコのマスに言葉をあてはめていく「クロスワードパズル」。「日曜の朝、新聞を開いたときの楽しみ」という人も多いでしょう。

手のひらサイズで、ちょっとした時間しのぎにぴったり――そんなイメージのクロスワードパズルですが、2016年にパズル制作の老舗・株式会社ニコリが発表した「メガクロス」は、幅約1m、長さ13mの巨大な巻物型。ギネス世界記録に認定され、まだ「解き終わった」という報告がないという常識を覆す大きさです。価格は25万円(税抜)と、これまたビッグ。

なぜ、ここまで巨大なクロスワードを作ろうと考えたのでしょうか。制作のきっかけや苦労について、みずからも生粋のパズル愛好家である、同社コンテンツ営業担当・広報宣伝担当の荒井奈緒さんにお話を伺いました。

制作期間3年の壮大なチャレンジ

株式会社ニコリ 第一事業部長の荒井奈緒さん。

――「メガクロス」制作のきっかけは何だったのでしょう。

荒井さん(以下、敬称略):
以前、ある会社の「世界最大のクロスワードを作ろう」というキャンペーン企画で、かなりの語数を収録したクロスワードの制作を手掛けました。そのときギネス世界記録のことも調べて、パズル会社である私たちとしては、いつか記録を更新しようと思っていて。ニコリが季刊で発行している「パズル通信ニコリ」が35周年を迎えるタイミングで、チャレンジすることを決めました。

とりあえず、見ていただいたほうがわかりやすいですよね(メガクロスを広げる)。

――想像以上の大きさですね…!

荒井:
タテ129マス、ヨコ1,899マスの計24万4,971マスで、収録語数は6万6,666語。全長は13mあります。ギネス世界記録を申請する際には測量士による証明書が必要なのですが、社内では広げきれないので、近くの体育館を借りて計測してもらいました(笑)。
ニコリではクロスワードを作るとき、点対称になるように見た目の美しさにも配慮して黒マスを配置しています。メガクロスも、上から見るときれいな模様を描いていますよ。広げると、何かのタペストリーのようにも見えます。

――初めに黒いマスの位置を決めるのですか。

荒井:
メガクロスだけでなく、ニコリのクロスワードづくりは黒いマスを配置する、マス決めからスタートすることが多いです。点対称になるように黒いマスを配置すると、2文字がいくつ、3文字がいくつというように、答えの単語の文字数とその数が決まりますよね。その数に応じて答えを埋め、同音異義語や重複の調整をしたら、カギを作って完成です。

――メガクロスの場合、マスを決めて答えを埋めていくだけで相当な時間がかかりそうです。

荒井:
そもそも、2文字、3文字、4文字、それぞれの単語の絶対数に限りがあるので、それより少なくなるようにマス決めをしなくてはなりません。通常のクロスワードでは同音異義語を使用しませんが、それでは単語が圧倒的に足りないため、メガクロスでは「誌上」と「市場」のように、同音異義語も可として答えを埋めていきました。

通常業務と並行して取り組んだので、文字数に応じた単語を洗い出して、マスを埋めるのに1年。ヒントを考えるのに1年。さらに1年かかってすべてを解いて、全部で3年かかりました。

ひねり出した単語数は、実に6万6,666語

――作業は何人で、どのように進めていくのでしょう。

荒井:
クロスワード全体を複数の四角いピースに区切り、10人以上のメンバーに担当のピースを割り振る形で作業しました。一人ひとりが得意とする分野から単語を導き出すことで、組み上がってみたら同じ単語がたくさん使われていた…という事態を防ぐためです。私は、古典芸能やお笑いが好きなので、落語家やお笑いコンビの名前などをよく使いました。

区画のどこか一部に焦点を絞って問題を解いていくと、温泉、ゲーム、地名、駅名、囲碁・将棋など、そのピースを担当した人の得意分野が見えてくると思います。6万語以上あるので、カギを解いて答えがわかっても、それが入るマスを探すのがたいへんですが(笑)。

――解答を確認するときは、自分の担当分野以外を解いていくわけですね。

荒井:
はい。ただ、得意分野以外のところはそうとう難しい(笑)。歴史系の問題などはマニアックなものもたくさんあって、辞書や検索エンジンをフル活用しました。メガクロスにはタテ・ヨコのカギの本のほかに、答えの本も付属するのですが、購入してくださる方には、インターネットなどをうまく使いながらチャレンジしてもらえたらと思います。

――これまでに、どのような方が購入されているのでしょう。

書籍版と巻物版のカギの本。

荒井:
カフェやバーなどに置いて常連客で楽しんだり、パズル研究会などの部活動やサークルで購入してみんなで挑戦したりと、グループで楽しんでいる方が多いようですね。「記念に購入して、毎日少しずつ解いています」というクロスワードマニアの方もいらっしゃいます。全部解いたというご報告は、まだいただいたことがないですね。

巻物版ではなく書籍版(※)になると、スペース的にも価格的にも(笑)手を出しやすいので、もう少し裾野が広いのではないでしょうか。パズル好きのアイドルが、SNSで「メガクロスが欲しい」と投稿したら、ファンの方が書籍版をプレゼントしてくれたという話も聞きました。

※クロスワードの盤面を巻物ではなく、地図帳のように書籍に収めてある。3万5,000円(税抜)。

パズルという共通言語で誰でも仲良くなれる

――荒井さんご自身も、昔からパズルがお好きだったそうですね。

荒井:
はい。小学生の頃からパズルが好きでよく解いていて、中学、高校はパズルにのめり込んでいました。大学1年生のときには、視聴者参加型のクイズ番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」にも出場しました。

小学生時代、本屋さんで初めてパズル通信ニコリを見つけたときは、「パズルばかりが載っている、こんな変な本があるのか!」とびっくりして(笑)。当時は、今ほどパズル専門誌が存在していなかったので、そこからは毎号買っていましたね。中学生になってからは、自分で投稿もしていました。

――投稿というのは?

荒井:
パズル通信ニコリは、大部分を読者投稿のパズルで構成しています。読者から作品を募り、毎月数百通程応募があります。パズル愛好家にとって、自分が作ったパズルが掲載され、人気が出たら単行本化もしてくれる仕組みはとても魅力的。私も、読者時代は新しいパズルを作っては投稿し、単行本にも掲載されています。

――パズル好きの女の子がそのまま大人になって、幼い頃から親しんでいたパズル雑誌を作る会社に就職するなんて…!人生にパズルが大きく関わっているんですね。

荒井:
実は、夫ともパズルを通じて出会いました。パズル通信の愛読者は、元々誌面を通じた交流が盛んなんです。当社の社長は、「SNSが登場する前から、うちは双方向型のコミュニティメディアだった」と言っています(笑)。

昨今はあまり開催できていませんが、イベントも多く主催していますので、そこで出会って仲良くなることもありますね。年代や性別が違っても、パズルという共通言語があればすぐ仲良くなれるんですよ。中学生とそのおじいさんくらいの年代の方が意気投合して、連絡先を交換している光景も見かけます。

ステイホームの影響でパズル需要が増える

──パズル業界は、荒井さんのような熱烈なファンに支えられているのですね。

荒井:
そうですね。ただ、パズル作家さんのように正面から支えてくれている方だけでなく、密かに力になってくれている方も多いんです。

ある新聞にクロスワードパズルを長期掲載しているのですが、少し気分を変えようと、まったく違うテイストのパズルに変えてみたことがありました。そうしたら、「なぜ変えたんだ」「毎週楽しみにしていたのに、元に戻してほしい」という要望が殺到して。
結局、数ヵ月で元に戻しましたが、パズルが毎日の暮らしに溶け込むように存在していることって、けっこう多いんだなと実感しました。

世の中が不況のときにもパズル業界が一定の売上を保てているのは、目に見える愛好家と、あまり表には出てこないけどパズルを憎からず思ってくれている人たちのおかげですね。

――コロナ禍でも、パズル需要はアップしたと聞きました。

荒井:
ステイホームが呼びかけられ、自宅で過ごす時間が増えたことで、パズルに親しむようになったという声をよく聞きます。じっくり新聞を読む時間ができて、初めていつもやっていたクロスワードの横にある「ニコリ」の社名に気づき、気になって調べて「パズル通信ニコリ」にたどり着いたという方もいましたね。
また、雑誌や新聞の旅行の広告がすべてキャンセルになり、空いた誌面にパズルを提供してほしいという依頼をたくさんいただいたんです。それで、これまでパズルに親しんでこなかった方の目にふれる機会が増え、パズル人口が増えたこともあると思います。

中でも顕著だったのが、小学生向けの「数独(ナンバープレース)」の販売数の増加です。これまで、数独は難しいほど売れるといわれていたのですが、真逆の現象が起きました。「親はテレワーク、子供は休校で煮詰まりかけたとき、数独があって助かりました」といったお手紙をたくさんいただいて、とてもうれしかったです。

――パズルに助けられた人がたくさんいたのですね。

荒井:
新型コロナウイルスの集団感染が起き、多くの乗客乗員が船内待機となったダイヤモンド・プリンセス号でも、トランプなどといっしょに数独が配られたという話がありました。ニコリの物かはわかりませんが、気軽な娯楽として親しまれてきたパズルが、こんな風に世の中の役に立つことがあるのは新鮮な驚きです。

おかげさまで売上が上がったこともあり、最前線で戦っている医療関係者の皆様に少しでも還元できればと、自社発行の出版物、およびデジタルデータの売上の一部を医療支援のために寄付しています。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

荒井:
昔からのパズルファンも、最近になってクロスワードパズルや数独に親しんでくれた方も、ずっとパズルを好きでいてくれるように、これからもおもしろいパズルをどんどん作っていきたいですね。

メガクロスの記録更新は、かなりの時間と労力がかかるので…。発売から少々時間が経ったので、カギの本の改訂版を出そうかという話はありますが、ギネス世界記録の更新は今のところ考えていません。でも、一度経験している分、次はもっと効率的にやれるかな。この先、どこか別の会社や団体が私たちの記録を抜くようなことがあれば、もう一度チャレンジするかもしれません(笑)。

●取材協力
株式会社ニコリ

住所 東京都中央区日本橋浜町3-36-5 日本橋浜町ビル3F
URL https://www.nikoli.co.jp/ja/

 

執筆者プロフィール

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