【プロ伝授】スマートフォンのカメラで「いい写真」を撮るテクニック

カメラアプリを立ち上げ、構えてシャッターボタンを押すだけで、誰でも簡単にきれいな写真が撮れるスマートフォンのカメラ。思い出に残したい風景や、人物のいい表情を逃さず記録できるのは、携帯性に優れたスマートフォンならではのメリットです。
ここでは、スマートフォンのカメラを使ってより良質な写真を撮影するテクニックを、フリーで活動するフォトグラファーの西田優太さん・西田妹さん夫妻に教えていただきました。

撮影の基本は「光」「アングル」「構図」

――スマートフォンのカメラを使えば、それなりにきれいな写真が撮れますが、仕上がりをワンランクアップさせる方法はありますか?

撮影のコツさえ押さえてしまえば、人物や料理をより印象的な写真に仕上げることができます。まずは、どの被写体を撮影するときにも共通して知っておきたい、「光」「アングル」「構図」の考え方を説明しますね。

「太陽は1つ」を意識して光の取り入れ方を決める

「太陽は1つ」というのは、写真を撮る際に基本となるライティングの考え方です。当然、太陽は1つしかありませんから、撮影の際には光がどこから、どのようにあたっているかを考えることが大切です。

■順光と逆光の例

順光の場合、被写体の顔ははっきり写る。

逆光の場合は暗く、空も白っぽい。

・順光
順光とは、撮影者が太陽を背にして立ち、被写体の正面から太陽の光が射している状態のこと。この場合、空は青く、被写体ははっきりと写ります。ただし、立体感や奥行きは薄れるため、全体的にのっぺりとした印象になる傾向があるでしょう。

・逆光
逆光とは、被写体の後ろに太陽がある状態のこと。この場合、人や動物は暗く、空は白っぽくなります。「逆光はNG」と思っている方は多いかもしれませんが、食べ物をみずみずしく見せたり、人物をやわらかく見せたりするのには適しています。また、撮影後に色と明るさを補正すると、鮮やかで透明感のある仕上がりになるので、逆光にも挑戦してみてほしいですね。

・横から
太陽の光が横から被写体に差し込むような角度で撮ると、被写体に影ができて立体感のある写真になります。メリハリをつけたいときに良い光の取り入れ方です。

■光の取り入れ方の例

光が横からの場合。

光が斜めからの場合。太陽の角度によって陰影のつき方も変わり、被写体に立体感が出る。

スマートフォンの枠を額縁に見立てて、アングルを決める

「被写体を絵として描くとしたら?」という視点で、物を写す角度であるアングルを決めると、撮影者が被写体に感じた魅力が伝わる、いきいきとした写真になります。スマートフォンの画面の枠を額縁だと思って、その中にどんな絵を描きたいかを考えてみるようにしてください。
例えば、子供を下から撮ると、子供と同じ目線で躍動感が伝わる写真になりますし、建物を下から撮ると迫力ある高さを強調することができます。

■アングルが上からと下からの例

アングルが上からの場合は大人目線の写真に。

アングルが下からの場合は子供目線の写真に。

グリッド線を活用して、構図を決める



被写体や背景をどこに配置するのかといった構図を決めるときも、アングルと同じく絵を描くイメージで決めましょう。カメラアプリ(iPhoneの場合は設定からカメラを選ぶ)から設定で、「グリッド線」をオンにして、バランスをとるのがおすすめです。
一般的に、見せたい物を真ん中に配置することが多いと思いますが、あえて少し奥に配置したり、思い切って前に持ってきたりすると個性的な写真になります。

人物撮影のポイント

――では、光、アングル、構図を基本に、人物を撮影するときの具体的なポイントを教えてください。

「子供」「景色と人」「建造物と人」の3パターンで考えてみましょう。

子供の場合

子供の写真は、低めのアングルで撮ると表情と動きをしっかりとらえることができます。じっとしていられない小さい子の場合、動画で撮って静止画を切り出してもいいでしょう。

景色と人の場合

景色も入れて人物を撮りたいときは、景色を強調したいなら上からのアングルで、人を強調したいなら下からのアングルで撮りましょう。

上からのアングルの場合は周囲の景色が強調される。

下からのアングルの場合は人物が強調される。

建造物と人の場合

観光地などで記念撮影をする場合、「人をスポットに寄せる」のではなく、「人をカメラに寄せる」のが正解。高低差が少なくなってバランスがとれ、スポットも人物もはっきり写ります。

人物をカメラに寄せるように立ってもらうと、バランスが良くなる。

――知っておくと役立つカメラアプリの機能はありますか?

HDR(High Dynamic Range)の設定は、デフォルトでオンにしておくといいと思います。これは、露出の異なる写真を同時に複数枚撮影し、肉眼で見たときと近い状態に補正した写真を生成してくれる機能です。特に、明暗差が大きいシーンで効果を発揮します。
また、背景を自然にぼかすポートレートモードを使うと、メインの被写体をより引き立てることができます。

■HDRとポートレートモードを使用した例

HDRがオンでの撮影。逆光で撮影しても、HDRの場合は空も青になる。

ポートレートモードでの撮影。

――被写体の表情をなごませるときの、声のかけ方があれば教えてください。

「ハッピー」や「たこやき」など、母音が「い」で終わる言葉を言ってもらうと、自然に口角が上がって良い表情が撮れます。未就学児までの小さい子は、なんといってもキャラクターグッズが最強!カメラ目線になるように、片手でグッズをスマートフォンの横に持って上手に気を引き、笑顔を撮影しましょう。赤ちゃんは優しく手を叩いて音を出したり、音が鳴るおもちゃを使ったりすると、視線を向けてくれますよ。

料理撮影のポイント

――お料理を撮るときはどうでしょう。

料理の写真は、アングルと構図がポイント。高いところから見下ろすような俯瞰アングルで撮るなら、全体がわかる構図で撮るか、お皿や入れ物などは無視して寄って撮るかで、まったく違う雰囲気になりますよ。
見る人の想像をかき立てるよう、あえて一部を写さないようにしてもいいですね。

■構図のアレンジ例

真俯瞰の場合。

一部を写さない場合。

寄った場合。同じ被写体でも、それぞれ印象は大きく異なる。

また、料理だけにフォーカスしてもいいのですが、お皿やカトラリーを写して空間に遊びを入れると、食べるシーンを想像させて食欲を刺激するおいしそうな写真になります。

■空間に遊びを入れる例

横位置で撮影して料理に寄った場合。

縦位置で小物を入れて撮影した場合。

――構図を工夫すると、すごくおしゃれな感じがしますね!

そうですよね。あとは、光のあて方も大切です。光を正面からあてると立体感がなくなるので、後ろ斜め45°くらいからあたるように配置しましょう。
このとき、電気の色が混ざるとメリハリのない写真になるので、窓がある部屋なら部屋の電気は消して、自然光を取り入れます。

――撮った写真と実際の色合いに差があるときは、どうすればいいですか?

色補正機能を使って撮影後の写真を補正して、イメージに近づけましょう。彩度を上げると色鮮やかに、明度を上げると明るくなるので、調整して良いバランスを見つけてください。
さらに、赤みを加えると全体に温かみが生まれ、青みを加えると涼しそうな印象になります。

■色補正機能の例

通常モードで撮影した写真。

色補正機能を使った場合の写真。おいしさ倍増に!

――活用できる機能がほかにあれば教えてください。

料理だけでなく、風景や人物を撮るときにも活用できる機能ですが、ピントや明るさを調節してくれるAE/AFロック機能は知っておくと便利です。なお、ピントを固定することをAFロックといい、明るさを決めて固定することをAEロックといいます。

スマートフォンのカメラのAE/AFロック機能の使い方は簡単です。被写体に向かって、iPhoneの場合はピントを合わせたい部分を長押し、Androidなら軽く画面をタッチすると、カメラが自動的にピントを合わせ、明るさを判断してくれます。

iPhoneの場合は、画面に黄色の四角(AF)と太陽マーク(AE)が登場して固定され、Androidの場合は白色の円と露光マークが登場し、鍵マークをタップまたは長押しで固定ができます。

AE/AFロック機能は、逆光で画面が暗くなってしまう場合などに使うと、適切な明るさに調節してくれます。また、夜景などの暗い場所でライトアップされたシーンを撮る場合に活用すると、全体の明るさが調節されてきれいに撮影できるため、とても便利ですよ。

iPhoneの場合は、画面上に出る太陽のマークを上に動かすとより明るく、下に動かすとより暗くなるので、好みの明るさに調整が可能。

基本的な機能と考え方をマスターして撮影を楽しもう!

――スマートフォンでのカメラも、ちょっとした工夫で素敵な写真が撮れるんですね。

西田妹:
撮りたいと思ったときにさっと取り出して、きれいな写真を撮れるのがスマートフォンの良さですよね。そのため、普段からレンズの状態のチェックと撮影スタイルに注意して、シャッターチャンスに向けた準備を怠らないようにしておきましょう。

・レンズを拭いておく
レンズの汚れは、写真の出来に大きく関わります。スマートフォンの背面は指でよくさわるので、知らないうちにレンズに指紋や汚れが付着していることも。くっきりきれいな写真を撮るために、レンズは小まめに拭いておきましょう。

・脇を締めて手ぶれを防ぐ
片手で持ってさっと撮れるところがスマートフォンのカメラの便利さでもありますが、手ぶれを防ぐため、できるだけ両手で持ちましょう。脇を締めるようにして構えると、さらに安定します。


今回ご紹介したポイントを押さえるだけで、今までとはちょっと違う写真が撮れると思います。ぜひ、いろいろ試して、撮影を楽しんでくださいね。

<プロフィール>
西田優太(にしだ ゆうた)
1983年、大阪府生まれ。撮影助手を経て、2015年にフリーに。企業広告のスチール撮影から人物ポートレートまで幅広く手掛ける。

西田妹(にしだ まい)
1986年、大阪府生まれ。株式会社原田写真事務所の原田茂樹に師事し、2018年にフリーに。料理、建築、商品、人物などの撮影が得意。

 

執筆者プロフィール

  • 本稿は、執筆者が本人の責任において制作し内容・感想等を記載したものであり、SBI新生銀行が特定の金融商品の売買や記事の中で掲載されている物品、店舗等を勧誘・推奨するものではありません。
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