専門医が解説!中年男性を悩ませる「男性更年期障害」とは?

「最近なんだか疲れやすい」「仕事もプライベートも気力が起きない」「性欲の減退や性機能に自信が持てない…」。
年齢を重ねる中でこれらの症状にあてはまる男性は、もしかすると「男性更年期障害」かもしれません。女性の更年期障害に比べてまだ認知度が低いこの疾患とは、どのようなものなのでしょうか。

今回は泌尿器の専門医で、メンズヘルス外来の診療にも積極的に取り組む医師の窪田徹矢先生に、男性更年期障害についてお話を伺いました。

男性更年期障害ってどんな病気?

――初めに、更年期障害とはどのようなものなのか教えてください。

窪田先生(以下敬称略):
更年期障害と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、おそらく女性の更年期障害ではないでしょうか。ところが女性に限らず、男性にも更年期障害は起こります。

男性更年期障害とは、医学的にLOH症候群(late onset hypogonadism)と呼ばれる疾患です。加齢によって男性ホルモンであるテストステロンが低下することで、さまざまな症状が心身に現れます。男性更年期障害については、何十年も前から概念はあったものの、専門的に治療を行うクリニックがとても少なく、女性の更年期障害に比べてあまり表面化してこなかった経緯があるんです。

しかし昨今は、芸能人などがメディアで自身の男性更年期障害について口にするようになったことで、「男性にも更年期がある」ということが、少しずつ知られるようになってきました。当クリニックでも1日に平均約10人、1ヵ月で200人程男性更年期障害の患者さんを診ており、男性更年期障害への認知が徐々に広がってきていると感じています。

――男性の更年期とは、どの時期にやってくるものなのでしょうか?

窪田:
女性の場合は女性ホルモン(エストロゲン)が急激に低下する閉経の前後10年間が更年期とされています。男性の場合、テストステロンは早ければ30代後半から、多くは40代以降ゆっくりと低下していきます。ホルモンが急激に低下し、必ず閉経を迎える女性と違い、ホルモンの低下はあくまで緩やかで、中には下がらない人もいるというのが男性ならでは。
このように個人差が大きいことも、男性更年期への理解を難しくしている一因かもしれません。

――男性更年期障害になると、どのような症状が現れるのですか?

窪田:
テストステロンが低下し、男性更年期障害になると、さまざまな症状が現れます。

<主な更年期障害の症状>
・汗が止まらない
・イライラする
・疲れやすい、体がだるい
・集中力の低下
・眠れない
・性欲がなくなる、ED(勃起障害)

身体的な症状もありますが、実は男性更年期障害は心理的な不調が多く見られるものなんです。実際に、「仕事に行くのがつらい」「気持ちが落ち込む」といった症状に悩み、うつ病を疑って心療内科などを受診したものの改善せず、検索して男性更年期の症状にたどり着き、当クリニックに来院する患者さんも少なくありません。
どのような症状が男性更年期障害の可能性を考えるポイントになるのか、目安となるチェックリストがありますので、気になる方はぜひ試してみてください。

<もしかして更年期障害かも?セルフチェックリスト>
(1)心身共に調子が思わしくない
(2)関節や筋肉が痛む
(3)思いがけず突然汗が出ることがある
(4)睡眠に悩みがある(寝付きが悪い、ぐっすり眠れないなど)
(5)日中に眠くなったり疲れを感じたりする
(6)些細なことにイライラする
(7)神経質になったと感じる
(8)不安感がある
(9)疲労感、気力の低下を感じる
(10)能力が落ちたと感じる
(11)憂鬱な気分になる、落ち込みがち
(12)「人生の山は過ぎた」と感じる
(13)「力尽きた」「どん底にいる」と感じる
(14)ひげの伸びが遅くなった
(15)性的な能力が衰えた
(16)早朝勃起(朝立ち)が減った、なくなった
(17)性欲が低下した

症状の程度に合わせて「なし…1点」「軽い…2点」「中程度…3点」「重い…4点」「非常に重い…5点」で採点し、合計点を算出します。
点数が「27点以上」の場合はテストステロン低下による男性更年期障害の可能性が考えられますので、ぜひクリニックを受診することをおすすめします。

男性更年期障害を加速させてしまう要因

――更年期障害になりやすいタイプの人はいるのでしょうか?

窪田:
先程、テストステロンの低下には個人差があるとお話ししましたが、実は男性更年期障害は社会性に直結しています。テストステロンはよく「リーダーシップに関わるホルモン」ともいわれるように、実際に、年齢を重ねてもテストステロンがあまり減らない人の中には、50代や60代でも人の上に立ち、人と関わり続ける立場にある人が多いように感じます。民族・氏族で生きるアフリカの男性たちは、何歳になっても長であり続けるからか、更年期がないという説もあるほどです。
反対に、「社会的に孤立していくこと」がテストステロンを低下させる要因のひとつになってくることが考えられるでしょう。

――生活習慣にも関わりはあるのでしょうか?

窪田:
テストステロンは、いわゆる生活習慣病にも密接に関わっていますね。生活習慣病を招くとされる「運動・食事・睡眠」という3つの環境の悪化は、テストステロンの低下にもつながってきます。
特に昨今は、リモートワークで通勤の機会が減り、運動不足の人がより増えているのではないでしょうか。以前よりも筋肉が落ち、脂肪が増え、気付けばおなかが出てきている…。このような典型的な現代日本の中年男性は、まさに男性更年期障害を加速させる要素がそろっているとも考えられるのです。

――男性更年期障害は自然に改善へと向かうものなのでしょうか?

窪田:
テストステロンが低下し、男性更年期障害の症状が出てきた場合、よほどみずからが進んで生活習慣を変えたり体質改善に取り組んだりしない限り、症状が改善することはありません。
疲れやすく、元気がない状態でセルフケアに取り組めるとは、そもそも考えにくいものです。ですから、適切な病院を受診し、適切な治療を受けることが最善だと思います。

――何科を受診すればいいのでしょうか?

窪田:
男性更年期障害の症状に思いあたるという方は、専門的に「メンズヘルス科」と掲げている病院へ行くのがベストですが、その数はまだ少ないのが現状です。近隣でメンズヘルス科が見つからなければ、泌尿器科を受診しましょう。ただし、ウェブサイトなどを見て、泌尿器科の中でも男性更年期障害に対して治療を行っているかどうかを事前に確認することをおすすめします。

男性更年期障害の治療と、生活の中で注意したいこと

――実際に男性更年期障害と診断された場合、どのような治療をしていくのでしょうか?

窪田:
私のクリニックではまず、チェックリストを行ってもらい、その後に問診と採血を行うのが基本です。採血によってテストステロン値を測り、男性更年期障害だと診断された場合はホルモン補充を検討します。ホルモン補充の注射(診断がついた場合は保険適応)をスタートするのが治療の主流で、注射の頻度としては2〜3週間に1回から。その後は、ホルモン値の推移を見て頻度を調整していくことになります。同時に、男性ホルモンクリーム剤を外用薬として使用していくこともおすすめしています。

――治療のほかに生活の中で、注意したいポイントはありますか?

窪田:
男性更年期障害を治していく上では、生活習慣を見直すことも大切です。食事や間食で糖質をとりすぎないこと、少しずつで良いのでスクワットなどの筋トレを日課に取り入れること、テストステロンが最も分泌されるという夜中1時から3時はしっかりと睡眠時間にあてることなど、さまざまあります。
また、オンラインでもいいので意識していろいろな人と会い、話す時間を作ることもおすすめです。

泌尿器科へ行くことは恥ずかしいことではありません!

――本人がなかなか受診へ至らない場合、家族はどうしたらいいでしょうか?

窪田:
泌尿器科と聞くと「下半身を見せなければならないのでは」「恥ずかしいことをされるのでは」などと想像し、受診をためらう方もいるかもしれません。でも実際に行うのは、問診と採血のみの場合がほとんどです。
当クリニックには、家族やパートナーに付き添われて来院する男性患者さんも少なくありません。受診の時点でうつ病の薬をすでに服用しているけれど、「もしかすると男性更年期障害ではないか?」と家族やパートナーの方が気付き、受診を促していっしょに来院されるケースです。
そのような患者さんが検査をして男性更年期障害だとわかり、適切な治療を受けたことで、うつ病の薬が不要になるくらい元気になった事例をこれまで何度も目にしてきました。ご本人はもちろん、家族やパートナーがとても喜んでいる姿は私にとってもうれしいものです。

受診して不調の原因が男性ホルモンにあることが明確になれば、「治療して治る」とゴールが見え、それだけでも患者さんの心が軽くなります。ご家族の後押しも受診のきっかけになりますので、少しでも疑いがあれば、「男性更年期というものがあるみたいだから、ちょっと病院で相談してみない?」などと声をかけてあげてみてほしいですね。

――患者さん本人がなかなか受診へ足を踏み出せないケースも多いんですね。

窪田:
男性更年期障害をはじめ、泌尿器に関することで悩んでいる人はたくさんいるのに、病院に行くことにハードルを感じて受診しない方がとても多いと感じています。そのハードルを少しでも下げ、「こんな悩みでも泌尿器科に行っていいんだ!」とわかってもらいたい思いで、私は専門医として日々、SNSなどで情報発信を続けています。通院に二の足を踏んでしまうという方にはオンライン診療も行っていますので、ご相談にのることも可能です。
この記事をきっかけに、一人でも多くの悩んでいる方が、泌尿器科へ相談に行ってみようかなと思えることを願っています。

<プロフィール>
窪田徹矢

医師/くぼたクリニック松戸五香 院長。獨協医科大学卒業。勤務医としてキャリアを重ねた後、2017年に泌尿器科・内科・皮膚科の「くぼたクリニック松戸五香」を開院。メンズヘルス外来も開設し、男性更年期障害に悩む多くの男性を診察。男性更年期障害への認知・理解を深めるためにYouTubeやTikTokなどでの情報発信にも力を注いでいる。医師としてのミッションは「明るく楽しく健康で長生きできる社会を作る」こと。

 

執筆者プロフィール

  • 本稿は、執筆者が本人の責任において制作し内容・感想等を記載したものであり、新生銀行が特定の金融商品の売買や記事の中で掲載されている物品、店舗等を勧誘・推奨するものではありません。
  • 本資料は情報提供を目的としたものであり、新生銀行の投資方針や相場説等を示唆するものではありません。
  • 金融商品取引を検討される場合には、別途当該金融商品の資料を良くお読みいただき、充分にご理解されたうえで、お客さまご自身の責任と判断でなさるようお願いいたします。
  • 上記資料は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を新生銀行が保証するものではありません。

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