仕事で失敗ばかり!「もう自分はダメだ」と落ち込んだときの対処法

大なり小なり、仕事に失敗は付き物です。失敗してもすぐ立ち直れる人もいれば、「自分はダメだ」といつまでも落ち込んだり、「また失敗するのでは」と不安になってしまったりする人もいます。
「いつまでも引きずりたくない」「早く立ち直りたい」と頭ではわかっていても、一度落ち込んでしまうと、現実にはうまく気持ちを切り替えられないことも多いものです。仕事で失敗して落ち込み、心が折れてしまいそうなときは、いったいどうすれば良いのでしょうか。
Twitterのフォロワー数が37万人を超え、YouTubeでも活躍中の精神科医Tomy先生に伺いました。

落ち込んだときは、まずは行動と環境を変える

――仕事の失敗に落ち込みやすいタイプとそうではないタイプには、どのような違いがあるのでしょうか?

Tomyさん(以下、敬称略):ミスをしたときに落ち込みやすい、失敗を引きずりやすい人は、気持ちの切り替えが苦手なタイプだといえるでしょう。でも、気持ちを切り替えるのは訓練が必要で、実際にはなかなか難しいものです。
ですから、落ち込んだときは、「気持ちを変えよう」とアプローチするよりも、まず行動と環境を切り替えることをおすすめしています。人は行動を変えればその行動について考えるようになりますし、環境が変わればその環境に応じて気持ちが切り替わるものです。

行動と環境を変えるときは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を意識することがポイント。音楽を聴く、映像を見る、体を動かすなど、何でも構いません。散歩やジョギング、マッサージ、人によってはアロマなども良いかもしれませんね。
同じ場所でずっと考え込んでいても、落ち込んだ気分が続くだけ。仕事で失敗をしてもあまり引きずらない人は、行動や環境の切り替えを無意識のうちにうまくできているのだと思います。

――仕事の失敗を引きずってしまうのは、自己肯定感と関係があるのでしょうか?

Tomy:確かに、自己肯定感が低い人は、クヨクヨしやすい傾向があります。ただし、仕事の失敗と自己肯定感は、切り離して考えるべきでしょうね。自己肯定感とは、自分のやりたいことをやる、自分のことを「そのままでいい」と肯定する感覚のことです。
でも、仕事というのは、やりたいからやるのではなく、ある程度決まった内容ややり方で進めるものですよね。自己肯定感を高めるためには、自分の正直な気持ちを振り返ることが大切ですが、仕事の失敗で落ち込んだときに必要なのは「事実の分析」。仕事の失敗においては、感情と事実をきちんと分けて考えたほうがいいのです。

失敗したときに大切なのは評価ではなく分析

――とはいえ、仕事で失敗をすると「自分はいつもダメだ」「何をやってもどうせダメだ」などと考えてしまいがちです。

Tomy:意識してほしいのは、「自分で自分の評価をしない」ということです。必要なのは、良いとか悪いとかいう評価ではなくて、「なぜこういうことが起こったのだろう」という次につながる分析なんです。
「自分はダメだ」からは何も生み出せません。自分で自分の評価はしないと決めておけば、「自分のこの行動はダメだった」「次からはこうしよう」と変わっていけると思います。

――普段からの意識付けも大切になりそうですね。

Tomy: そうです。仕事ができる人というのは、失敗をしないのではなくて、失敗したときにPDCA(Plan→Do→Check→Action)をうまく回せているんです。

失敗をしたら、誰だって多少は落ち込んだり嫌な気持ちになったりするでしょう。でも、そのときに「なぜうまくいかなかったのだろう」「うまくいくにはどうすればいいのだろう」とPDCAを回している人は、落ち込んだ気分を引きずっている暇がないんですよ。
一方で、失敗をずっと引きずってしまう人は、PDCAを回せずに同じところに停滞しているので、その分時間をロスしてしまうことになります。悩んだり落ち込んだりすることで何かをしている気にはなるけれど、実際には自分をへこませているだけという可能性もありますよね。

――仕事で失敗をしてもまったく気にしないタイプの人もいます。落ち込みやすいタイプからすると、うらやましく感じることもありそうですが…。

Tomy: 失敗をしてもまったく気にしない、反省もしないというタイプの人は、落ち込むことはないかもしれませんが、同じミスを繰り返す可能性が高いです。それよりは、落ち込みやすいタイプの人のほうが、成長のチャンスがあると思いますよ。落ち込むということは、そこから抜け出したいと考えているわけですから。その時点で、「反省も分析もしない楽観的な人より一歩先に進んでいる」と考えることができます。

ただ、落ち込むだけで分析をしなければ、嫌な気分を引きずっているだけになってしまいます。成功しているように見える人でも、みんな必ず失敗をして、PDCAを繰り返しながら成長してきたはず。仕事で失敗をしない人なんていません。違うのは、失敗した後に何をするかです。

落ち込んだ気分を引きずらないためには、「頭がお暇になる」状況を作らない

――落ち込んだ気分を引きずらないために、気をつけたほうが良い習慣などはありますか?

Tomy:何もせずにボーッとする時間が多いと、ネガティブなことをクヨクヨ考えてしまいがちです。何かをしていても集中できず、気もそぞろになっているような状態ですね。
このような状況を私は、「頭がお暇になる」という言い方をしています。頭がお暇になっていると、失敗したことをいつまでも引きずってしまいがち。しかも、目の前のことに集中できないので、また違うミスを起こしかねません。

――頭をお暇にしないためには、どうすれば良いのでしょう。

Tomy: これは、マインドフルネスの考え方とも共通しますが、大切なのは、目の前の物事に集中して、気持ちを満たしておくこと。そこにお暇なスペースができると、つまらないことを考えてしまいがちです。
例えば、掃除をするなら気持ちを集中させて隅から隅まで拭く。料理をするなら一つひとつの工程に丁寧に取り組み、完成した料理を集中して味わう。
仕事も同じです。目の前の仕事に集中していたら、過去の失敗をクヨクヨ考え続けている「お暇」はないはずですよね。

――なるほど。やるべきことに集中する、ということですね。

Tomy: 目の前のことに集中できている人というのは、自分軸で生きている人ともいえます。つまり、「自分がこれをしたい」「今からこれをやろう」という発想で体を動かしているので、「自分の行動が他人にどう思われるか」ということはあまり気にならないんです。
頭がお暇になりやすい人は、自分を中心に置いて動く癖をつけるといいかもしれませんね。

――他人からの目線が気になりがちな人は、プライベートでもその傾向が強そうですね。

Tomy: そうですね。今でいうと、SNSの使い方がわかりやすいですね。SNSの発信が、他人に評価されることを目的としているようだとあまり良くありません。
例えば、旅行の写真をSNSにアップする目的が、「旅行で訪れた素敵な場所をみんなに紹介しよう」であれば、自分軸なんですよ。でも、「こんな素敵な場所に行ってすごいと思われたい」なら、それは他人軸です。「人に認められたい」という他人軸では、他人の反応によって自分の気持ちが左右されることになってしまいます。プライベートでのSNSの使い方をあらためて見直してみると、自分の考え方の傾向が見えてくるかもしれません。

事実と感情を分けて考える

――仕事で失敗をしたとき、周りから何か言われて落ち込むこともあります。

Tomy: 仕事で落ち込んだときは、感情を切り離して「事実の分析」をするのが一番です。他人に何か言われて落ち込んだときは、「どんなシチュエーションで誰に何を言われたか」を分析するといいですよ。
例えば、ただ嫌みを言ってくるだけの人なら、何をしても結局文句を言ってくるので、1、2回謝ってあとは構わないほうがいいと思います。「ここはこうしたほうが良かったのでは」といったアドバイスが含まれているなら、それを取り入れて次から改善していけばいいんです。

――「ミスを叱責されると人格を否定されたような気持ちになる」「落ち込んでいるとほめ言葉も素直に受け止められない」という声も聞かれますが…。

Tomy: できる上司は人格否定をしません。人格否定をしたらパワハラです。そうではなく、ミスに対して「こうしなさい」と言っているのに、受け手側が勝手に「自分を否定された」と捉えてしまっているケースも多いんです。
感情と事実がごっちゃになってしまっていることを受け止めて、事実と事実ではないもの、感情と感情ではないものを、きちんと区別して考えることをおすすめします。それが、先程お話しした「分析をする」ということです。

他人のほめ言葉を素直に受け止められないときも、事実と感情を分けて考えるべきです。「素直に受け止められない」というのは感情ですよね。それに対して、ほめられたポイントは事実です。そういうときは、事実としてどこが良かったのかを具体的に聞いてみるといいですよ。

――「自分の失敗で周りに迷惑を掛けてしまった」という心苦しさには、どう対処すれば良いでしょう。

Tomy: 「心苦しい」「申し訳ない」と思っているなら、その気持ちは相手にちゃんと伝わります。立場を逆にして考えてみるとわかりやすいと思いますが、例えば同僚や後輩がミスをしても、いつまでも気にしたり腹を立てたりすることはありませんよね。無断欠勤を繰り返すとか、故意に人に迷惑を掛けるとかなら話は違いますが、そもそもそういう人は申し訳ないとも思わないでしょう。
ですから、「申し訳ない」という気持ちがあるだけで十分なのです。あとは、次に同じ失敗をしないように考えて、いつもどおり周りとコミュニケーションをとっていけば大丈夫ですよ。

失敗が怖いときはどうすればいい?

――仕事の失敗には、大きな失敗をしてしまうケースと、小さなミスを繰り返すケースがあると思います。それぞれの対処法を教えてください。

Tomy: 大きなミスも小さなミスも、対処法として大切なのは、先程お話ししたPDCAです。ただ、大きい失敗をしてしまった場合は、おそらく準備不足や把握不足が原因です。失敗が大きいということは根本的な間違いがあるはず。考え方を変えれば、「分析のしがいがある」ということなんですよ。大きな失敗や初めて起こすミスは、分析すれば問題点はすぐに見えてくるでしょう。

――大きな失敗ほど深刻に考えてしまう人が多いと思いますが…。

Tomy: そもそも大きな失敗は、自分だけの問題ではない可能性が高いです。その仕事を1人に任せることに無理があるのかもしれないし、チェック体制が行き届いていないことがミスを引き起こしたのかもしれません。
ですから、失敗の状況をチームや上司と共有した上で、改善に向けて取り組んでいくべきですね。起こったことの大きさゆえに気分は落ち込むかもしれませんが、そもそも1人で抱えきれるものではないし、抱える必要もないんです。

――小さなミスを繰り返してしまうケースにはどう対処すれば良いでしょうか?

Tomy: どちらかといえば、大きなミスよりもこちらのほうが深刻です。同じミスを繰り返すというのは、「原因がわかっていない」「改善できていない」ということですから。小さなミスを繰り返してしまうときは、なぜいつも失敗するのかをしっかり分析しなければなりません。そもそも、その業務が自分に向いていないのか、詰めが甘いのか、見落としが多いのか、考えられる原因はいろいろありますよね。原因がわかったら、失敗が起きようがない環境に変えてしまうことです。
例えば、忘れ物が多いのであれば、必要な物をひとまとめにして玄関に置いておくとか、仕事でもプライベートでもいつも同じ鞄を使うとか。そうやって環境を見直していくと、ミスをなくすことができると思いますよ。

――仕事のやり方を見直すのも大切かもしれませんね。

Tomy:そうですね。結局、大きな失敗も小さな失敗も、対処法として大切なのはPDCAなんです。仕事ができる人、失敗を引きずらない人は、PDCAをうまく回すことができます。仕事で失敗をしてしまったときは、感情はいったん切り離して、事実を分析するようにしましょう。
どうしても落ち込んだ気分から離れられないときは、行動と環境を切り替えて、そちらに意識を向けるようにしてみてくださいね。

<プロフィール>
精神科医Tomy

1978年生まれ。某名門中高一貫校を経て某国立大学医学部卒業後、医師免許取得。研修医修了後、精神科医局に入局。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。2019年6月から本格的に投稿を開始したTwitterでは、2022年11月現在、フォロワーが37万人を突破。YouTubeチャンネル「精神科医Tomyの人生クリニック」も人気。著書に「精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉」(ダイヤモンド社)、「精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方」(ダイヤモンド社)、「精神科医Tomyの気にしない力~たいていの心配は的外れよ」(大和書房)など多数。

※2022年11月に取材しました。

 

執筆者プロフィール

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