大判からカラーコインまで!造幣局さいたま支局に行ってきた(後編)

さいたま市にある造幣局さいたま支局には、工場とともに「造幣さいたま博物館」が併設されています。館内には大判・小判や古い貨幣、カラーの記念貨幣、勲章・褒章など、約1,000点が展示されており、見学は無料。

前編の工場見学に続き、後編ではガイドさんの案内のもと、博物館のさまざまな展示品を見学させていただきました。普段は撮影不可の豪華な勲章や、製造されたにもかかわらず実際には使用されなかった「幻の陶貨」など、貴重な展示品が続々登場します。

貴重な展示品からお金の歴史が学べる博物館

博物館には、古いお金から現在使われている貨幣まで、貴重な展示品が並んでいます。まずはお金の歴史をおさらいしていきましょう。

最も古い貨幣は和同開珎じゃない?

「日本で最も古い貨幣は和同開珎である」と学校で習った人は多いでしょう。しかし現在は、683年頃に鋳造された「富本銭(ふほんせん)」が日本最古であるといわれています。富本銭は1999年に奈良県の飛鳥池遺跡で発掘されました。その後の調査・研究によって富本銭は、708年に鋳造された和同開珎より古い貨幣であることがわかったのです。

富本銭と和同開珎について解説する、見学ガイドの向井良徳さん。

貨幣に刻まれた「富本」という言葉は、「富民之本在於食貨(民を富ませる基本は、食と貨幣にある)」という中国の故事に由来しています。

3,000万円もの価値がある大判

江戸時代に入ると、貨幣鋳造の実権を手にした徳川家康によって貨幣制度が作られ、貨幣が統一されていきました。慶長6年(1601年)、徳川家康は大判・小判・一分金の金貨と丁銀・豆板銀の銀貨を鋳造。貨幣を作る権利を独占し、交換比率を決めたのです。
しかし、時代によって大判小判の金含有量は変化します。慶長年間(1596~1615年)における小判の金含有量は1000分の857で、現在の18金(1000分の750)よりも純度が高いものでした。
ところが、元禄年間(1688~1704年)に入ると、江戸幕府が大判の品位(純金含有量)を落としたため、純度が1000分の564と質が悪くなります。それによって、小判の価値も下がってしまいました。

慶長6年(1601年)の「慶長大判金」。

ところで、大判には墨文字が書かれていますが、何と書かれているかご存じでしょうか。
写真の「慶長大判金」には、手書きで「拾両後藤」と書かれ、最後に花押(サインのこと)があります。後藤とは、室町時代から江戸時代まで、彫金師として大判の鋳造と墨判を請け負っていた「後藤家」のこと。時代によって書体は若干異なるものの、大判の墨書きはすべて「拾両後藤+花押」という形式になっています。

ちなみに、館内に展示されている大判・小判はすべて本物です。古銭商などでは、1枚あたり3,000万円もの値段で取引されているものもあるそうです。まさに貴重品!

戦争末期に製造された幻の陶貨

第二次世界大戦の末期、日本では貨幣の材料となる金属の調達が困難になりました。そこで、1944年に金属以外の材料研究を始め、最終的に粘土と長石を主原料とする陶貨幣(瀬戸物で作るお金)が最適ということになったのです。陶貨は造幣局の設備で造ることができなかったため、1945年、製陶業の盛んな京都市、愛知県瀬戸市、佐賀県有田町の請負工場で製造されました。
約1,500万枚が製造されましたが、流通させるには十分な数といえず、さらに、終戦とともに金属の不足も解消されていきます。結局、陶貨は発行前に粉砕処分となり、世に出回ることはありませんでした。

1945(昭和20)年に製造された、幻の「10銭陶貨」。実際に使われることはなく、粉砕処分された。


1950~1951年に製造された「10円洋銀貨」も、同じような運命をたどりました。洋銀の素材として使われたニッケルが、軍需資材となって使用制限されたため製造を停止し、結局発行されなかったのです。
このように、戦争や材料となる金属の高騰、偽造などにより、貨幣の材質や形状が移り変わっていきました。

勲章・褒章にホールマーク…あまり知られていない造幣局の業務

造幣局では、貨幣の製造以外に「勲章・褒章の製造」と「貴金属製品の品位証明」の業務を請け負っています。普段あまり見ることのない勲章・褒章と、ホールマークについて解説していただきました。

国事行為だから国の機関で造る「勲章・褒章」

造幣局の意外な役割に、勲章や褒章の製造があります。勲章やそのほかの栄典の授与は、天皇陛下の国事行為に位置づけられ、その製造は造幣局が行っているのです。
日本において最も位の高い勲章は、「大勲位菊花章頸飾」です。大勲位菊花章頸飾は、勲章の中で唯一首飾りの形をとり、明治時代に制定されたことに由来して「明治」の文字が、古篆字(こてんじ)という書体で装飾されています。

古篆字で「明治」が装飾されている「大勲位菊花章頸飾」。

大勲位菊花章頸飾は大勲位菊花章の一種です。現在、日本の勲章は全部で22種類あり、以下の6つに大別できます。

■勲章の種類と授与対象

大勲位菊花章・桐花大綬章:旭日大綬章または瑞宝大綬章を授与されるべき功労より優れた功労のある人
旭日章:国家または公共に対し功労のある人で、功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた人
瑞宝章:国家または公共に対し功労のある人で、公務などに長年にわたり従事し、成績を挙げた人
文化勲章:文化の発達に関し特に顕著な功績のある人
宝冠章:外国人に対する儀礼叙勲など特別な場合で、女性のみ

桐花大綬章は、元内閣総理大臣や元参議院議長、元衆議院議長などが多く受章し、2017年には森喜朗元内閣総理大臣が受章しました。2015年には元東京都知事の石原慎太郎さんが旭日大綬章を受章。最近では2021年春に歌手の森進一さん、秋に脚本家の大石静さんらが旭日小綬章を受章しています。
瑞宝章は主に学校の校長先生などの公務員、文化勲章は科学や文化のジャンルで顕著な功績のある人、宝冠章は外国人女性に対する儀礼叙勲や女性皇族を対象に授与されます。

一方、褒章のデザインは「褒章」の2文字を桜の花で飾った円形のメダルが共通で、リボンの色により下記の6種類に区分されます。

■褒章の種類と授与対象

紅綬褒章:自身の危難を顧みず、人命の救助に尽力した人
緑綬褒章:長年にわたって社会奉仕活動(ボランティア活動)に従事し、顕著な実績を挙げた人
黄綬褒章:農業、商業、工業などの業務に精励し、他の模範となるような技術や事績を有する人
紫綬褒章:科学技術分野、学術、スポーツ、芸術文化分野において優れた業績を挙げた人
藍綬褒章:会社経営や団体での活動により、産業の振興や社会福祉で優れた業績を挙げた人、または保護司、民生・児童委員、調停委員など公共の事務に尽力した人
紺綬褒章:公益のため私財を寄付した人

この中で、最も聞きなじみのある褒章といえば「紫綬褒章」ではないでしょうか。 フィギュアスケートの羽生結弦選手やミュージシャンの桑田佳祐さんなど、スポーツ選手や芸能人が数多く受章しています。

文化勲章(左)と6種類の褒章(右)。

国が品位試験を行った証「ホールマーク」

指輪やネックレスなどの貴金属に、細かい文字や記号が入っているのを見たことがあるでしょうか。もし、そこに日の丸のマークが打刻されていれば、それは造幣局による品位証明です。

造幣局では、貴金属製品のメーカーや販売事業者からの依頼に応じて、品位試験を行っています。品位とは、金属の純度のこと。打刻された証明記号は通称「ホールマーク」といい、国が認めた信頼度の高い金属の証明であるといえます。

造幣局のホールマークには、造幣局の記号を示す日の丸と千分率で品位(純度)を表す数字、純白金または白金合金を示す「Pt」が示されています。一般的に使われる18金は、千分率にすると1000分の750なので、ひし形の中に750と打刻されます。打刻された数字を見れば、金属の純度が一目でわかるわけです。

貴金属製品に打刻されている「ホールマーク」。

オリンピックから寅さんまで!記念貨幣などいろいろ

国民みんなでお祝いする行事の際など、特別に製造・発行される貨幣を「記念貨幣」といいます。皇太子殿下ご成婚やオリンピックの記念貨幣は有名ですが、中にはちょっとマイナーなものもありました。

「地方自治法施行60周年記念貨幣」はカラー印刷

日本で初めて発行された記念硬貨は、1964年の東京オリンピックの記念貨幣で、100円と1,000円の銀貨幣でした。その後、日本万国博覧会や青函トンネル開通、2002年のサッカーワールドカップ、皇太子殿下ご成婚など、国の行事やスポーツの祭典を記念して発行されています。

地方自治法施行60周年記念貨幣は、47都道府県でそれぞれ500円と1,000円が発行されました。1,000円銀貨幣はカラー印刷です。ゴムパッドで貨幣に色をつける「パッド印刷」で造られるとのこと。

地方自治法施行60周年記念貨幣。

「埼玉県の1,000円銀貨幣には渋沢栄一が描かれています。新紙幣に採用されることで話題となりましたが、実は記念貨幣で先に使われていたんですよ」(見学ガイドの向井さん)

さまざまなキャラクターとコラボした貨幣セットも販売されています。映画「男はつらいよ」公開50周年記念プルーフ貨幣セットのほか、ウルトラマン、リカちゃん、ゲゲゲの鬼太郎、くまのプーさん、ドラえもん、サザエさんなど、数多くの貨幣セットが展示されていました。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の記念貨幣は、第四次まで発行され、大人気だったそう。

さいたま支局ミュージアムショップ

出口にはお土産屋さん「ミントショップ」がありました。ミントというとハーブを思い浮かべる人が多いですが、mintには「造幣局」という意味もあるんです。

ミントショップには、造幣局製品のほかに和同開珎をかたどったもなか「和銅最中」をはじめ、明治時代の金貨・銀貨を模した缶入りキャンディー、貨幣のデザインをカラフルに装飾した「造幣ラムネ」などのミュージアムグッズが販売されていました。和銅最中は、さいたま支局オリジナルの人気商品とのこと。
なお、造幣局だけあって、ミュージアムグッズの支払いは現金のみです(造幣局製品はクレジットカードの使用可能)。貨幣セットは造幣局オンラインショップでも購入が可能です。

独立行政法人造幣局オンラインショップ

和同開珎をモチーフにした人気のもなか「和銅最中」。

大人も子供もお金のことが楽しく学べる

製造現場を見学できるだけでなく、大判・小判や昭和時代の貨幣など、「お金の歴史」も楽しく学べる造幣局。間違いなく、子供から大人まで楽しめるスポットです。見学はすべて無料というのもうれしいですね。

自由見学は予約なしでできますが、造幣局の仕事やお金の歴史について詳しく知りたい場合は、約1時間30分のガイドツアーがおすすめです。気になった人は造幣局のウェブサイトでチェックしてみてください。

(取材・執筆:村中貴士、撮影:大澤妹)


●取材協力
独立行政法人造幣局さいたま支局

〒330-0835
埼玉県さいたま市大宮区北袋町1-190-22
工場および博物館の見学(いずれも無料)については、造幣局のウェブサイトからご確認ください。

 

執筆者プロフィール

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